日本代表の決勝トーナメント進出に寄せて

ワールドカップ2018 グループリーグ最終戦ポーランド戦で日本は0-1で負けてしまいましたが、フェアプレーポイントでセネガルを上回り決勝トーナメント進出を決めました!

 

前評判では厳しいと思われていたグループリーグ突破を決めたのだから、諸手を挙げて祝福したいところですが、日本のポーランド戦の終盤の戦略が物議を呼んでますね、、、

 

簡単に状況をおさらいすると、

日本とセネガルが試合開始前の時点では勝ち点得失点差などで並んでいる状況でした。同時刻キックオフの日本対ポーランドセネガル対コロンビアの結果、日本が決勝トーナメントが決勝トーナメント進出するための条件は、

勝つか引き分ければ無条件で進出

日本が負けた場合は、

セネガルが勝てば日本は決トナ進出、引き分けた場合は敗退、セネガルが負けた場合は、セネガルを得失点差やフェアプレーポイント上回れば決トナ進出

ということでした。

 

そんな状況で、同時刻キックオフした2試合。前半はどちらもスコアレスドローで経過。このまま引き分けで終われば、、、という状況でしたが、59分に日本が先制点を取られてしまいます。その時点でセネガル戦は0-0のまま、このまま試合が終わると日本はグループリーグ敗退が決まってしまうので、点を取りにいかなければならない状況になりました。しかし、点をとれないまま時間が経過、そうこうするうちにもう一方の試合、74分にコロンビアが先制。

この時点でこのまま試合が終われば、日本とセネガルは勝ち点、得失点差、総得点、当該チーム同士の対戦での勝ち点、当該チーム同士の対戦での得失点差、当該チーム同士の対戦での得点で全てイーブン、フェアプレーポイントで日本が上回り決勝トーナメントに進出できるという状況になったわけです。

 

それを受けて、83分に西野監督は長谷部を投入。ここから日本は完全に消極的な作戦を選択しました。リスクを冒さず、最終ライン付近でのパス回しで時間を消費したのです。それに対してポーランド側も積極的なチェイシングはせず、そのまま試合は終了。その数分後、セネガル対コロンビアが0-1のまま終了し、その時点でフェアプレーポイントの差で日本がセネガルを上回り決勝トーナメント進出を決めたわけです。

 

このことに対して、日本のこのまま負けでOK、リスクを冒さずパスを回して試合終了を待つという作戦を非難する声が国外、国内問わず多数あがっているようですが、僕は全然非難されるようなことではないと考えています。

日本対ポーランドの終盤、目の前で起こっていることはただのパス回しであり、それは消極的でつまらない光景でした。しかし、その実は決して単なる消極的な選択だけではなかったと思います。

 

日本が1点差のまま試合を終わらせることを狙ってプレーをする一方で、後のないセネガルが攻勢に出て、もし同点に追いついていたら、西野監督、日本代表はセネガルが負けることを信じて、自分たちの試合を負けのまま終わらすという消極的な選択をするも、あてが外れてグループリーグ敗退という、ワールドカップ史上にも残るような無様な敗退として、きっととてつもない非難を浴びたことでしょう。西野監督、日本代表はそうなる可能性、リスクも踏まえて、0-1の負けのまま試合を終わらすという作戦を選んだわけです。この作戦はポーランド戦という1試合だけで見たら、消極的なプレーに写りますが、グループリーグ全体の順位争いという大局で見たら非常に大胆で積極的な選択だったと思います。日本選手はノーリスクで悠々とパスを回しているように見えたかもしれませんが、西野監督はきっと胃に穴が開くくらいひりついた気持ちで勝負を見ていたんじゃないかと思うわけです。

 

そもそも、仮に日本が同点においついて自力で決勝トーナメント進出を決めるために攻勢に転じたとして、ポーランド相手に点を取ることができたのでしょうか?そんなことはやってみないことにはわかりませんが、事実としてあるのは、日本としては引き分けでも決勝トーナメント進出ができるという条件の中で戦って後半38分の時点で0-1で負けていたということのみです。点を取ろうと攻勢に出て、10分程度で同点に追いつくというプランを現実的に立てて実行に移せるくらいのレベルなら、最初っから苦戦しないだろという話でもあります、、、そして、もし攻勢に出たら、カウンターなどで失点をするリスクも増える訳で、試合の終盤で運動量が落ちてきていたとはいえ格上のポーランド相手に対してとる作戦としてはリスクが高かったかもしれません。

 

決勝トーナメントの最終戦前、西野監督、日本代表は最終局面での得失点差やフェアプレーポイント差など、いろいろな場面をシミュレートして試合に臨んだのだと思います。その中で、残り10分を切ってこのまま両方の試合とも点数が動かなければ決勝トーナメント進出が決まるという状況。日本が最終ラインでパスを回してしまえば、勝っているポーランドはそこまで積極的にチェイスしてこないだろうし、日本が0-1で試合を終わらすことは容易と判断できます。その一方でセネガル対コロンビアはというと。セネガルは同点に追いつかないとこのまま敗退が決まるので、意地でも点を取りにいきますが、コロンビア相手に残り時間で点を取れる可能性はどれほどだったのでしょう?(ちなみに、コロンビアは引き分けでも決勝トーナメント進出ではあるので、なにがなんでも点を取られてはいけないという状況ではないとも言えましたが、、、)

非常に難しい判断ではありますが、これらの可能性を総合的にみて残り約10分リスクを冒さずこのまま負けのまま試合を終わらすのが、決勝トーナメント進出のためには最良の手と判断したということでしょう。

 

そして、その賭けに勝って日本は決勝トーナメントに進出!非常に勇気のいる決断だったと思いますし、その賭けに勝ったからには褒めるべきだと思っています。

 

そもそも、勝負事、ギャンブルの世界では、大局を見て目先の勝負を敢えて捨てるという判断をすることはよくあることだと思います。そういうときに、完全に勝ちの目を捨ててベタオリしてしまうか、それとも自分の勝ちの目を残しながらリスクを抑えつつ戦うかという二択は常に難しいものですが、、、ただ、そういうケースにおいて、中途半端に欲をかいてしまって失敗することは少なくないと思います。

ポーランド戦の日本代表の場合も、このままのスコアで行けばギリギリ突破できるけど、相手(セネガル)次第になってしまうから、あわよくば自力での突破のために得点を狙いつつ、でもリスクは極力抑えて、みたいな中途半端なことをするのが一番危なかったのではないかなと思います。やるなら、意地でも得点して自力で予選突破を決めるつもりでリスクを負って攻勢に出るか、あるいはベタオリ。日本は目先の勝負のベタオリを選択して、大局で勝利したのです。素晴らしいじゃないですか。

 

もちろん、終盤つまらない試合を見せられたことに対するブーイングは理解できますが、その裏で確固たる覚悟を持った決断があっただろうことは評価すべきだと思います。ベタオリだって、状況によっては立派な作戦なのです。

ただ、それでも納得いかないというのなら、その不満はルールの中で消極的な作戦をとった日本だけではなく、ルールを作ったFIFAにも向けられるべきだと思います。

 

ちなみに、僕はポーランド戦のラスト15分くらい(セネガル対コロンビアが0-1になって以降)の観戦中、すごく興奮しておりました。サッカーの試合としてはつまらないけど、セネガルと日本どっちが決勝トーナメントに進めるかという勝負、心理的な駆け引きを楽しんでた感じですね。西野監督、勝負師だなぁ!やるなぁ!とただただ感心して見ていました。結局のところ、サッカー以上にギャンブルや心理戦の類いが好きということなんでしょうかね、、

 

まぁ、そんなこんなで決勝トーナメント進出を決めた日本代表!ベタオリしての消極的プレーで非難を受けてしまいましたが、決勝トーナメントに進むために選択した決断と胸をはって欲しいです。そして、ベルギー戦で今回の批判を振り払うような熱い試合を見せてもらえたら嬉しいです。

 

ちなみに、そもそもスタメンを大きく変えたのは正解だったのかとか、後半38分に至るまでの戦術や選手個人のプレーがどうだったのかとかは、無視して単純に後半38分から消極プレーを選択したことについてのみの意見です。

あと、僕がその選択を比較的高評価をしてるのは、消極プレーをして批判を受けるリスクやポーランド相手に点を取りに行くことで生じるリスク、さらにはセネガルがコロンビア相手に残り約10分で同点に追いつく可能性など、全てを考慮した上で、決勝トーナメント進出という目標のために敢えてポーランドベタオリというギャンブルを選択をしたのだろうという想定に基づいています。もし、点取られてテンパって思考停止してしまい、"攻めに出てカウンターでもう1点取られたらヤバイし、このままいけば突破できるし、パス回して時間稼げばいいや!"という短絡的な考えに基づいてとった選択だとしたら、あり得ないなぁと思います。